データで見る新設法人増減率ランキング47|大阪が首位。でも比べる期間を変えると、見え方が変わる

目次
2015年から2025年の10年間で、新しく設立された会社が73%増えた大阪府。同じ10年で福島県は23%減り、47都道府県で最下位でした。ところが、福島県を15年前と比べると、まったく違う数字が出てきます。都道府県ごとの会社の設立件数をたどりながら、ランキングの順位だけでは見えてこない地域の変化を探ります。移住や転職先を考えるときにも役立つ、数字の読み解き方を紹介します。
会社の設立は増加。増え方は地域でさまざま
新しく設立される会社の数は、地域経済が盛り上がっているのかを知る手がかりの1つです。以下のグラフは、2015年から2025年までの都道府県別の新設された法人数の増減率です。地域にある会社の総数ではありません。2025年に全国で設立された会社(株式会社と合同会社)は14万5326件でした※1。10年前の2015年より30.9%増えていますが、増え方は都道府県によって大きく違います。1位は大阪府、2位は沖縄県で、最下位の福島県だけが2割を超えて減っています(法務省「登記統計」)。
(法務省「登記統計」をもとに編集部集計)
大阪府|全国とは違う形で伸びた
全国では、10年間に増えた会社の設立件数の約3分の2を合同会社が占めました。一方、大阪府では株式会社の設立が51.3%増え、株式会社だけで比べても全国1位の伸びでした。10年間に増えた7212件のうち約6割が株式会社で、全国とは異なる伸び方でトップに立っています。2025年の1万7095件は、比較できる2006年以降で最も多い件数です(法務省「登記統計」)。しかし、比較する期間を15年間に広げると、そのトップが入れ替わります。
沖縄県|比べる期間を変えると、大阪府を抜いてトップに
沖縄県の新設法人件数は、10年間で43.4%増え、全国2位でした。ところが、2010年を起点にすると136.3%増で全国1位になり、107.3%増の大阪府を上回ります。2025年の件数は同じなのに、比較する年を5年さかのぼるだけで、順位が入れ替わるのです(法務省「登記統計」)。
順位が入れ替わる理由は、2010年から2015年の5年間にあります。沖縄県はこの5年間で、すでに64.9%増えていました。同じ期間の伸びとしては全国で最も高く、同期間の大阪府の19.9%増を大きく上回ります。この5年間の伸びが、2015年と比べた数字には含まれていないのです。
では、2015年から2025年の新設法人数で最下位だった福島県の場合、2015年以前の状況を加味するとどう変わるのでしょうか。福島県で変わるのは、順位ではありません。
福島県|同じ数字が「減少」にも「増加」にもなる
2025年に福島県で設立された会社は892件。10年前の2015年と比べると23.2%減で、47都道府県で最下位です。ところが、15年前の2010年と比べると24.4%増。同じ892件が、比べる年を変えるだけで「減少」にも「増加」にもなります。
では、福島県の会社の設立件数は、この15年間でどう動いてきたのでしょうか。震災前の2010年、福島県で設立された会社は717件でした。2012年には1082件へと大きく増え、2016年には1238件で最多に。その後は減り、2019年以降は1000件を下回っています(法務省「登記統計」)。ちなみに2015年は、震災後に会社の設立が大きく増えていた時期にあたります。つまり、2015年と比べれば減少に見えますが、震災前の2010年と比べれば増加になります。同じ2025年の数字でも、比較する年によって見え方が変わる理由がここにあります。
震災後の設立の増加は、当時の民間調査でも報告されていました。東京商工リサーチは、2012年1〜9月の福島県の新設法人が前年同期比68.8%増と、被災3県で最も高い伸びだったとしています(東京商工リサーチ(2013年3月7日公表))※2。
2010年と比べたランキングでも、福島県は47位でした※3。全国が65.7%増えるなかで24.4%増にとどまり、ほかの46都道府県はいずれもこれより大きく伸びています。順位は同じでも、「設立が減った県」から「設立は増えたけれど、伸びが最も小さい県」へと、数字の意味が変わります。
さかのぼって並べ直すと、ランキングが入れ替わる県も
一方、比べる年を2015年から2010年に変えると順位が大きく変動した県もあります。宮崎県や香川県は順位を20上げる一方、長野県は3位から15位、北海道は25位から45位へ下がります。同じ2025年の数字でも、どの年と比べるかで「伸びた県」にも「伸び悩んだ県」にも見えるのです。
(法務省「登記統計」をもとに編集部集計)
順位の向こうにある、地域の時間
10年前と比べれば、会社の設立が減った福島県。15年前と比べれば、増えた福島県。どちらも間違いではありません。1つの順位だけでは、その地域が歩んできた時間までは見えてこないのです。地方への移住や転職を考えるときも、ランキングの順位だけで地域を評価するのは好ましくありません。
都道府県の中には企業を積極的に誘致するため、補助金や税制優遇措置を打ち出すケースが少なくありません。スタートアップを支援したり独自のアクセラレーションプログラムを実施したりする地方都市も増えつつあります。各地域がどんな優遇施策を実施しているのか、起業をどのように支援しているのかなどの取り組みも、会社の設立件数の増減率とともに確認することが大切です。数字やデータの裏に潜む都道府県の取り組みに目を向けてみてください。
本記事の「新設法人」は、株式会社と合同会社の「設立」登記の件数の合計で、法務省「登記統計」をもとに都道府県単位に集計しました。47都道府県すべてがそろっています。なお、設立件数には会社を閉じる動きは含まれないため、企業の数そのものの増減とは一致しません。
※1 「登記統計」の「設立」欄の件数(本店所在地での登記)。組織変更、商号変更、種類変更、合併、会社分割による設立は含みません。特例有限会社は2006年の会社法施行以降、新たに設立できないため対象外とし、合名会社と合資会社は件数がごく少ないため除外しました。法務局と地方法務局の管轄区域は、北海道を除き都道府県と一致します。北海道は札幌、函館、旭川、釧路の4局の合計です。2006〜2025年のすべての年で、47都道府県の合計が登記統計の全国総数と一致することを確認しています。
※2 東京商工リサーチの件数は同社が独自に集計したもので、法務省「登記統計」とは集計の方法や対象が異なります。そのため、本記事では両者の数値を同じ表やグラフに並べていません。
※3 2010年だけが特殊な年だった可能性も確かめるため、2006〜2010年の5年間の平均と比べても、福島県の2025年の伸び(16.9%増)は47都道府県で最も低い結果でした。
【出典】
法務省「登記統計 商業・法人登記 統計表一覧」 e-Stat「登記統計」(商業・法人登記 年計表「法務局及び地方法務局管内別・種類別 株式会社の登記の件数」「同 合同会社の登記の件数」、2006〜2025年) 東京商工リサーチ 震災後の被災3県の新設法人調査(2013年3月7日公表)
参照日:2026年10月15日





