データで見る経済規模ランキング47/人口が減っても儲かる県?県内総生産でわかった地方経済のリアル

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この10年で、人口が約12万人減った県があります。山形県です。2013年度に約114万人だった人口は、2023年度には約103万人まで減少しました。
地方副業や関係人口など、移住をともなわずに地域と関わろうとする人にとって、自分のスキルや専門性がどの地域のどの産業で活きるのかは気になるところです。そのヒントになるのが、都道府県ごとの経済規模(GRP)の中身です。
では、同じ10年間で県の経済規模はどうなったでしょうか。縮小した――と思いきや、結果は逆でした。物価変動の影響を除いた実質県内総生産(GRP)は、約16%増加していたのです。
しかも、これは山形県だけに起きた特殊な現象ではありません。2013年度から2023年度に人口が減少した35県のうち、実質GRPも減っていたのはわずか4県。31県では、人口が減りながら経済規模が拡大していました。
なぜ、人が減っているのに経済は伸びるのでしょうか。都道府県別の「経済規模」をランキングするとともに、この10年間に何が伸びたのかを産業別に追うと、地方経済の意外な姿が見えてきました。
データで見る経済規模ランキング47
内閣府は「県民経済計算」として、都道府県ごとの県内総生産(GRP)を毎年公表しています。県内総生産は、1年間に各都道府県内で生み出された付加価値の合計で、いわば都道府県版のGDPにあたる指標です。
公表値には「名目」(実際の金額そのもの)と「実質」(物価変動の影響を除いた金額)の2種類があり、本記事では、ある時点の規模比較には名目GRPを、2013→2023年度の10年間の伸びを比較する場面では実質GRPを使用します。また、比較対象は47都道府県のうち、2023年度の規模比較では46都道府県、10年間の伸び比較では42都道府県です※1。

都道府県ごとに名目GRPを5段階の階級に区分して色分けすると、経済規模の大きい地域が一目でわかります。東京都の値が他県を大きく引き離しているため、単純な数値の大小ではなく、各階級にほぼ同数の都道府県が入るよう分位数で区分しています。
色が濃いほどGRPの順位帯が高いことを示します。もっとも濃い階級には東京都・愛知県・大阪府など三大都市圏に加え、北海道・埼玉県・兵庫県・千葉県も入っています。人口の少ない県ほど薄い階級になる傾向がありますが、この傾向にも例外があります。なお、徳島県は今回参照したデータで2023年度の値が確認できなかったため、他県と同じ色の階級ではなく「データなし」を示すグレー表示としています。
具体的な数値を順位で見ると、以下の通りです。
上位10県は、いずれも三大都市圏に位置するか、人口規模の大きい県です。ちなみに下位5県は山梨県、佐賀県、島根県、高知県、鳥取県でした。
上位には東京、大阪、愛知などの大都市圏が並ぶ一方、地方に目を向けると、茨城県は名目GRP約14.7兆円で全国11位。群馬県も約9.9兆円、栃木県も約9.8兆円と、いずれも10兆円に迫る経済規模を持っています。
10年前と比べると、順位そのものも動いています。42都道府県の中でもっとも順位を上げたのは大分県(32位→28位、+4ランク)、もっとも下げたのは青森県(30位→34位、-4ランク)でした。
冒頭で触れた通り、人口が減った35県のうち31県では実質GRPが増加しています。ここからは、実質GRPの伸び率が特に高く、本シリーズの前2作(転入率ランキング・有効求人倍率ランキング)でまだ取り上げていない3県、山形県・島根県・熊本県を通じて、その中身を見ていきます。
山形|人口は10%減ったのに、経済は16%成長。何が起きた?

山形県は2013年度から2023年度にかけて、人口が114万3807人から102万6207人へ10.3%減少しました。ところが実質GRPは、4兆278億7400万円から4兆6813億8900万円へ16.2%増加しています。
産業別に見ると、答えは製造業にありました。実質ベースの製造業は8670億1700万円から1兆4754億2300万円へ、10年間で70.2%拡大しています。その中身をさらに見ると、電子部品・デバイスが1632億8600万円から6620億5700万円へ約4.1倍に、化学工業も622億2100万円から3273億2300万円へ約5.3倍に拡大していました(山形県「令和5年度県民経済計算」報告書より)。

つまり山形県では、人が増えたから経済が大きくなったのではなく、電子部品・デバイスや化学工業といった、ものづくりの付加価値そのものが大きく伸びていたことがわかります。地方副業や転職で山形との接点を探すなら、まず注目すべきはこうした「ものづくり」の現場だと言えそうです。
島根|人口7.7%減、それでも経済+15.4%。伸びていたのは意外な産業だった

島根県は人口が703,738人から649,563人へ7.7%減少する一方、実質GRPは2,488,897百万円から2,871,295百万円へ15.4%増加しました。
伸びていた産業を見ると、意外な顔ぶれです。電気・ガス・水道・廃棄物処理業が87,753百万円から275,023百万円へ約3.1倍。製造業のなかでも電子部品・デバイスは48,531百万円から193,448百万円へ、山形県とほぼ同水準の約4.0倍に拡大していました(島根県「経済活動別県内総生産(実質)」統計表より)。
電力関連が3倍以上に拡大した背景を探ると、同じ時期に2つの動きがありました。2022年11月、中国電力の三隅発電所2号機(出力100万kW)が営業運転を開始したこと。そしてもう一つ、太陽光発電の導入量が2013年度の86,941kWから2023年度には413,968kWへ、約4.8倍に拡大していたことです(中国電力「三隅発電所2号機の営業運転開始について」、島根県「島根県の再生可能エネルギーについて」より)。※2

島根県の経済成長を支えていたのは、人口や消費とは直結しない、電力関連と電子部品という2つの分野でした。島根との関わり方を考えるなら、移住者数や消費の動きだけでなく、こうした産業の伸びにも目を向けておきたいところです。
熊本|「半導体で伸びた」は本当か?

熊本県といえば、台湾の半導体大手による大規模工場進出が広く知られています。「熊本の経済成長も半導体効果では」と考えたくなりますが、実際はどうでしょうか。
熊本県は人口が180万1467人から170万8834人へ5.1%減少する一方、実質GRPは5兆8346億7000万円から6兆4234億5800万円へ10.1%増加しました。ここで注意したいのが期間です。同社の熊本第1工場が量産段階に入ったのは2024年12月で、本記事が分析対象とする2023年度より後にあたります。そのため、2013→2023年度に確認された実質GRPの伸びを、第1工場の本格稼働によるものと説明することはできません(経済産業省「武藤経済産業大臣の閣議後記者会見の概要」(2025年1月21日)、経済産業省「第12回 半導体・デジタル産業戦略検討会議」資料3より)。
ただし、工場の建設や関連する設備投資自体は2023年度より前から進んでおり、そうした動きの影響がまったく含まれていないとまでは言い切れません。
では、実質GRPの伸びの中身は何だったのか。産業別に見ると、建設業が3237億200万円から4767億5800万円へ47.3%、製造業も9862億5600万円から1兆3667億5200万円へ38.6%、保健衛生・社会事業も6697億円から7985億3200万円へ19.2%と、いずれも第1工場の本格稼働より前の時期からすでに拡大していました(熊本県「令和5年度(2023年度)県民経済計算推計結果」報告書より)。

熊本県の実質GRPを押し上げていたのは、話題の半導体工場の本格稼働そのものというより、それ以前から伸びていた建設業・製造業・保健衛生など複数の産業でした。熊本を検討するなら、話題の半導体だけでなく、こうした裾野の広い産業にも目を向けておくべきでしょう。
3県を調べると、成長の理由はまったく違っていた
山形県、島根県、熊本県はいずれも、人口が減少するなかで実質GRPが増加していました。しかし、その中身はまったく異なります。
山形県では電子部品・デバイスと化学工業という、ものづくりの付加価値の伸び。島根県では電力関連と電子部品という、一見地味だが伸び幅の大きい2つの分野。熊本県では、話題の半導体投資が本格稼働する前からすでに伸びていた複数の産業。同じ「人口減少下の経済成長」という現象でも、その中身は地域ごとにまったく違う姿をしています。
地方経済の実像を、産業構造から読み解く
今回のデータが示しているのは、人口減少が必ずしも経済規模の縮小に直結しないという事実です。ただし、その理由を「人口が減っても経済は伸びる」と一括りにすることはできず、どの産業が、どのような背景で伸びているかは地域ごとに異なります。
こうした産業構造の違いは、企業が拠点を検討する際の判断材料になるだけではありません。地方副業や関係人口など、移住を伴わずに地域と関わろうとする人にとっても、自分のスキルや専門性がどの地域のどの産業で活きるのかを考えるための手がかりになります。今回見てきた山形の電子部品・デバイス、島根の電力関連、熊本の建設・製造・保健衛生といった伸びている産業は、そうした地域との接点を探すときの具体的な入り口になるはずです。
※1 内閣府「県民経済計算」で2013→2023年度とも実質GRPが確認できる42都道府県に、2023年度の名目GRPを各県公式発表値で補った石川県・奈良県・香川県・宮崎県の4県を加えたものが46都道府県です(徳島県は今回参照したデータで確認が取れなかったため対象外としています)。「35県中31県」など10年間の増減に関する記述は、内閣府データがそろう42都道府県で算出しています。 ※2 実質GRPは連鎖方式のため、産業別数値を単純合計した寄与度計算は行っていません。
【出典】
内閣府「県民経済計算」都道府県別データ(総括表1・2・9、2026年8月7日公表分) 山形県「令和5年度県民経済計算」公式掲載ページ(統計表「経済活動別県内総生産(実質:連鎖方式)」を含む) 熊本県「令和5年度(2023年度)県民経済計算推計結果」公式掲載ページ(表2-2 経済活動別県内総生産(実質:連鎖方式)実数。報告書PDFは同ページより入手可) 島根県「令和5年度県民経済計算」統計表掲載ページ(3-(2)-1実数、3-(2)-2増加率) 中国電力「三隅発電所2号機の営業運転開始について」(2022年11月1日付開示事項の経過報告) 島根県「島根県の再生可能エネルギーについて」 経済産業省「武藤経済産業大臣の閣議後記者会見の概要」(2025年1月21日) 経済産業省「第12回 半導体・デジタル産業戦略検討会議」資料3「半導体・デジタル産業戦略の現状と今後」(2024年12月23日開催分) 石川県「令和5年度石川県県民経済計算概要」(2026年7月1日公表) 奈良県「令和5年度奈良県県民経済計算」(2026年8月31日公表) 香川県「令和5年度香川県県民経済計算推計結果」(2026年8月28日公表) 宮崎県「令和5年度宮崎県県民経済計算」(2026年3月6日公表)
参照日:2026年9月17日




